育児の改善法はプラスするだけでなくマイナスすることも大事
私が日ごろ行っている育児相談やカウンセリングは、リアルな育児の現場です。様々なお悩みが持ち込まれますが、それらを心理学の知識を用いながら、改善へと導いていきます。
この『ポジ育の現場から』のコーナーでは、私が実際に支援をしていて気づいたこと、改善のヒントになりそうなことをお伝えしています。
今回のテーマは、現状を改善しようと思い立った時の方向性について。育児でプラスすること、マイナスすることのバランスについてお伝えしていきます。
今までやっていなかったことを新たにプラスすることで改善⇒得意
今はネット上にたくさんの育児情報が流れています。なにを選び、なにを捨てるか、迷うことも多いですが、やはり目に留まるのは、「○○するといいよ」という情報ではないでしょうか。
一方で、「○○はやめて」「○○したらNG」のような情報は、気にはなりますが、耳が痛くなってしまいます。
これまでたくさんの子育ての悩みを聞いてきて思うのは、人間誰でも、現状に新しいものを上乗せする試みはいろいろとやりたいと思うのですが、逆に現状から悪いことを削除する努力はなかなか難しいということです。
たとえば、ネットの育児情報やママ友からの口コミで、
- 小さいうちから英語を学ばせた方がいい
- ほめて育てた方が自己肯定感が高まるのでおすすめ
- スキンシップを心がけた方がいい
こんなことを聞いたら、「ならば!」と早速それを取り入れたいという気持ちになります。
今までやっていなかった育児法や育児グッズなど、”新しいこと”を導入するのは、育児を大きく変えてくれる気がするので、気持ちが動くものです。
今までやってきた悪しき習慣を断ち切ることで改善⇒苦手
一方で、
- 怒鳴るのを止めた方がいい
- 八つ当たりするのを止めた方がいい
- 感情的に叱るのを止めた方がいい
のような類のものはどうでしょうか。年初に持つ目標の中の、「今年は○○するのを止めます!」という誓いに出てくるような俗に言う”悪しき習慣”みたいなものです。今現在の育児でよくないな、改めた方がいいなと思われる”マイナス要因”のことですね。
これらは、本当はきちんと向き合って、取り除いていくべきアイテムなのに、努力が必要なこともあり、なかなか定着しません。気持ちを強く持って、自分の欲求に立ち向かわなくてはいけない場面もあったりするので、分かってはいても続かないことが多いものです。
2つを比べると、私たちは明らかに前者の方が得意で、後者の方が苦手です。新しいことを取り入れることには積極的なのに、今あるマイナス要因を消していくことには消極的になりがちです。育児を改善したいときや変化をもたらしたいときには、マイナスを減らすより、プラスを加えた方が、気持ち的に取り入れやすいのですね。
”足す”のは得意、”引く”のは苦手なのは人間の心理的傾向!?
このようなことはダイエットや体質管理などでもよく見られます。たとえば、
- ○○ヨーグルトを食べるとやせる
- 昆布を食べると美肌になる
- 1日に○○を3つ食べると○キロ減る
のように、現状に何かプラスαをする策の方が取り入れやすく、
- 夜は白米はやめた方がいいよ
- 18時以降は食べない方がいいよ
- 休肝日を作った方がいいよ
のように、現状から何かを減らさなくてはいけない”制約があるもの”はなかなか取り入れにくい……。そんなことないでしょうか。
でも、減らすものを減らさずに、ダイエットおすすめ食品や健康食品を食べていたら、ダイエットにはつながりにくいですよね。結局は余計に食べてしまっているのですから。
新しいことをプラスするだけでなく、”引く”を意識しよう
育児も同じで、
「○○しない方がいい」
ということをそのまま見過ごし、
「○○した方がいい」
だけを取り入れても、なくすべきアイテムがそのままになっているので好循環は生まれません。
たとえば、市が開催した子育て講座を受講し、「よし今日から○○メソッドを取り入れよう!」と子どもと向き合っても、叱る場面で怒鳴り散らしていたら、○○メソッドのよさを引き出せないままです。
なくした方がいいことに目を向けずして、新たなことを取り入れても、足を引っ張るものがあれば、そちらの方に引っ張られてしまいます。なので、本気で育児を変えたいなと思ったら、
- やめるべきこと
- 直すべきこと
- あきらめるべきこと
このような手放すべきものにも着手することがとても大事です。
どんなにほめても、もし叱る場面で子供の自尊心を傷つける暴言を散らし続けていたら、残念ながらせっかくのほめが十分に活きません。怒鳴ってしまった分、多めにほめて、相殺することはできないんですね。”なかったこと”にはならないんです。
今ある”止めたいこと”にも意識を向けて努力して、それで新しいことを取り入れると、育児はがらりと変わります。”足す”だけでなく、”引く”も同時に心がけることが育児を改善したいなと思った時のポイントです。