ヘリコプターペアレントやカーリングペアレント、その対処法や改善策

この下の2つの記事では、“ヘリコプターペアレント”、“カーリングペアレント”という言葉の意味や特徴、子どもに与えうる影響、さらには、「自分の程度を診断したい」という方のための「ヘリコプターペアレント度チェック」と「カーリングペアレント度チェック」をご紹介しました。

 

今回は、そこから脱却するために押さえておきたいポイントをお伝えしていきます。

 

過保護、過管理、過干渉が簡単に手放せない理由

上記の記事にあったチェックリストで、「自分はヘリコプターペアレント、もしくはカーリングペアレントの傾向がある」ということに気づいた場合、今ある過保護、過管理、過干渉を手放していくことが求められます。

ただそれは簡単ではありません。私たちは、なんだかんだ言って馴染みのあるやり方に慣れているからです。意識しないと、いつのまにか元に戻ってしまうのですね。

とくに過保護、過管理、過干渉でずっとやってきた場合、そこには、

  • ”過保護にする親”と”過保護にされる子ども”
  • ”過管理する親”と”過管理される子ども”
  • ”過干渉する親”と”過干渉される子ども”

という関係があります。

小さいうちはとくに、子どもは親に構ってもらうことが大好きです。そのため、子ども側も親の対応を過保護、過管理、過干渉だとは思っておらず、単純に「ママやパパが色々とやってくれる」と思っていることが多いのです。思春期になり、親と一定の距離を置いた関係を好むようになる頃になってはじめて、「ついてこないで!」「うるさいな」と、その距離の近さに違和感を持つことがよくあります。

よって、親が、「今日から過保護をやめよう!」と方針を変えると、それに物足りなさを感じ、赤ちゃん返りのようなぐずりを見せることもよくあります。そういう姿を見せられると、親も気持ちを揺すぶられ、また元のスタイルに戻ってしまう……。

過保護、過管理、過干渉は、お互いがそれに慣れてしまっているため、”共依存“が起こりやすく、かなり高い意識を持って改革をしていかないと、行ったり来たりを繰り返しがちなのです。

親のマインドセットが改善のカギに

これまで私が出会ってきたさまざまな事例を踏まえて感じるのは、過保護や過管理、過干渉を手放す、つまりヘリコプターペアレントやカーリングペアレントから抜け出すカギは、親のマインドセットにあると思っています。

マインドセットとは、捉え方のテンプレートのようなものです。

 

きっとご自身がヘリコプターペアレント、もしくはカーリングペアレントかもと思い始めた方は、頭の中で、

  • 宿題を手伝ってあげるのは過保護だろうか?
  • 時間うるさく指示するのは過管理なのだろうか?
  • 友だちのケンカに首を突っ込むのは過干渉だろうか?

のように、日々のさまざまなシーンを思い浮かべて、自問していると思います。

でも、このような1つ1つの問いに答えを出していく方法よりも、もっと根っこにあるマインドセットに直接触れた方が確実に改善が早いので、そこに着手していくのがおすすめです。

ということで、ここからはヘリコプターペアレント・カーリングペアレントから脱却するために、はじめに投げかけたい自問ということで2つの問いを一緒に見ていきましょう。

自問1:過保護対策 「子どもが今泣くのがイヤか、25歳で泣くのがイヤか?」

まず1つめは、

「子どもが今困ってしまうのと、将来困ってしまうのとでは、どちらが親としてイヤだろうか?」という問いです。

どちらか1つと言われたら、どうでしょうか?

 

カーリングペアレントに特徴的な先回り行動。親が先回りして困難をぬぐってあげたくなるのは、我が子の負の感情を避けたいからです。たしかに子どもの涙に親は弱いですよね。

「つらい目にあったら可哀そう」

「心が傷つきそうで怖い」

こんな風に思っている方が多い印象です。

でも心理学的に見れば、負の感情すべてが悪者というわけではありません。負けて悔しい思いをすれば、もっと練習をしようという気持ちにつながりやすいですし、失敗したら、次に上手くいくにはどうしたらいいかを考えるようになります。

その場ではすごくイヤな思いをしますが、次はそれを避けようという心理が働きやすくなるわけです。

そういう経験が少ないまま大きくなると、物事からスムーズに行くことに慣れてしまうため、1回の失敗で諦めてしまったり、長い努力ができなかったりと根気の問題でいずれ悩むことになります。

”いずれ”と言っても、遠い将来ではなく、小学校に上がったあたりから、

  • 宿題で難しい問題に当たるとすぐにあきらめてしまう
  • 最近はじめたばかりの習い事を2か月で退会することになった
  • 学校で興味のないことはだらだらとしてしまう
  • 授業中、じっと座っていられない

という形で出てくることもあります。

 

大人になって社会に出れば、むしろ1回でうまく行くことの方が少ないですよね。人生ずっと何でもうまく行くなんてありえないので、どこかの段階でそれに耐えうるメンタルを作っておくということはとても大事なことなのです。

親として、今泣く我が子を見るのがイヤか、25歳になって泣く我が子を見るのがイヤか。

一緒に過ごせる今のうちだったら、たくさん失敗をして、たくさん悔しい思いをしても、親がそばで見守ってあげられます。

子ども時代に経験する失敗やあやまちは、基本的にはやり直したり、繰り返したりすることで学びにつながっていくことが大半で、大人になってからの方が、失敗のダメージも大きくなりがちです。

ですので、これまでやってきたことを手放すことを、「申し訳ない」といった罪悪感にはさらさず、「あえてやってあげないことも愛情」と自分のマインドセットを変えていくことが先回り防止につながります。

マインドセット1:「あえてやってあげないことも愛情」

 

自問2: 過管理・過干渉対策「この子の人生はだれのための人生か?」

そして2つめは、人生の所有者についての問いです。

我が子が可愛いいあまり、いつのまにか自分と同化してしまうことがあります。「この子のためなら何でもできる」と。たしかに、我が子の命は、自分の命より大事だと考えている人は多いと思います。

しかし、その強い愛情がいつのまにか湾曲し、「自分の思い通りの子にしたい」「ママ・パパが一番よくわかっている」と子どもの人生を動かす主になってしまうとややこしくなります。

思う通りに動いてほしいので、

  • 親が何でも決めてしまう
  • 何でも管理してしまう
  • 問題が発生すればすぐに首を突っ込む……。

親の決めたレールの上から下に降りないようにと関わり過ぎてしまうのです。

 

たとえば、進路。親が子どものためを思って、受験するかしないか、するならどこを受けるかなどを選定することはあるものです。そのときに、まったく子どもが乗り気ではないとか、嫌がってさえいるのに、親が一方的に決めてしまったら……? 小学校高学年以降、思春期になると、たまっていたうっぷんが一気に爆発し、大きな反抗として現れることもあります。

「本当はやりたくなかったんだ」

「こんなことになったのはおまえたち(親)のせいだ」と。

「我が子に自分の人生を歩ませているかどうか」を問い、「この子の人生はこの子のもの」というマインドセットを意識的に取り入れることは重要です。

マインドセット2:「この子の人生はこの子のもの」

 

年齢相応の自立心を育てるためには手放す習慣を

ヘリコプターペアレントやカーリングペアレントに見られる過保護、過管理、過干渉の多くは、赤ちゃん時代や幼少期にやっていた関わりを、小学校高学年や中学生と年齢が大きくなってもそのまま続けてしまっていることで起こりやすくなります。

たとえば、幼稚園や保育園の頃は、園に持っていくバッグの中身を親がチェックするのはみなさんやっていることでしょう。たとえ、子ども自身が準備するのが理想ではあってもです。でも、普通であれば、成長とともに、その作業を子どもに委ねていきます。

しかし、それをしないまま、時が過ぎていくことも……。もし、中学生になっても、明日のカバンの準備を親が続けていたら、それは過度の関わりです。

また、小さい頃は、どんな習い事がいいか、どんな学校がいいか、このような情報を親が中心になって収拾することは多いですが、高校受験や大学受験の際に本人の意思を尊重せずに、「親の言うことを聞くのが一番」と勝手に決めてしまったら、それもやり過ぎです。

このように、以前は当たり前だった親の関わりが、10年経っても同じというのは明らかにNG。ここでは分かりやすくするためにこのような事例にしましたが、他にも子どもが自分で行なうべきことは、刻々と増えていくものなのです。

とは言え、ある日いきなり、「ほら、自分でやりなさい」と丸投げしてしまっても、できるわけではありません。そこには、根気よく並走することが大事になります。

立+木+見=親:手を出す代わりに、心を差し出す

近づきすぎず、離れすぎず、手を出す代わりに、心を差し出す

これが、ヘリコプターペアレント、カーリングペアレントからの脱却法だと私は考えています。

  • これまで気になってついついやってあげてしまったこと
  • このまま行ったら失敗するだろうと心配し、先回りしていたこと

これらに対し、「そろそろできる年齢かな?」と年齢のフィルターに通してみて、それでOKと判断したら、まずは横で見守ることを実践してみてください。

 

親という漢字は、分解すると「立つ」「木」「見る」でできています。親の役割とは、この漢字のように、木の上に立って、子どもたちを見ていることに近いのだと思っています。

親という漢字

失敗をぬぐってあげるのではなく、失敗したときに味わう負の感情に寄り添ってあげることが、親の役割です。子どもの成長につながる踏ん張りを、親が先回りして奪ってしまうのは、すごくもったいないことなのです。なぜなら、そういう思いは、その子を大きく成長させてくれるからです。

 

育児は本当に大変な仕事です。だからつい目線が目の前のことをどうすべきかに注がれがちです。でも、その近い目線からいったん離れ、ぼーっとお子さんを見つめて、「この子が20歳になったときどういう人間であってほしいか」と考えてみてください。きっと、その答えがいい見直しの機会をくれるはずです。

お子さんの将来像をイメージして、「ならば今どうすればいい?」と導き出すと、自分のマインドセットを整えやすくなります。