子どものウソのトリセツ①~子どもがウソをつく理由

多くの親御さんが悩む「子どものウソ」。私の相談室でもよく聞かれるテーマです。この記事では、許容できるウソと注意すべきウソの違いや、子どもがウソをつく心理的背景など、基本的な理解ポイントを解説します。

ウソの定義は意外と難しい

「ウソ」と一言で言っても、実は意味合いに幅があります。広い意味では「事実とは違うこと」、そして狭い意味では「人をだます目的で事実とは違うことを言うこと」とされています。

もし、「事実とは違うこと」をすべてウソと見なした場合、2歳過ぎから見られる:

  • 「うさぎさんが『一緒に遊ぼう』って言ってるよ」と言ったり
  • 空のコップをゴクゴクと飲むマネをしたり
  • 機関車が急にしゃべりだしたり

このような言動や行動もウソということになってしまいます。しかしだれも「ウソをついた」なんて思いませんよね。

さらには、6歳あたりから、

  • 父の日のサプライズプレゼントを準備するために、「なんでもないよ」と言いつつひそかにお絵かきをする
  • 分量を間違えて大失敗した料理を、「おいしいよ」とほめてくれる

のような言動や行動もちらほら出てきます。こちらも定義と照らし合わせるとウソということになってしまいますが、相手を思いやる気持ちの表れですので、温かく受け止めていきたいものです。

気をつけていきたいウソ

上記は親側もウソだと認識することはない類のものですが、3歳以降になると、要注意のウソもちらほら出てきます。小さい子がつくウソは典型的なものが多いので、その瞬間の子どもの心理別に5つよくあるパターンをまとめてみました。

子どもの心理 よくある言動
自分が得をしたい 「ボク、みんなより少ない!」(実際は同じ)
怒られたくない 「ボクじゃない、○○がやったんだ」
よく思われたい 「ちゃんと渡したよ」(実は忘れている)
さらに何かが欲しい 「まだ食べてないよ!」(実はもう食べた)
やりたくない 「もうやったよ」(やっていない)

これらから分かるのは、子どもがウソをつく主な理由は「自己防衛」だということ。自分の立場が危うくなりそうな状況から逃れ、有利な状況を作りたいときにウソをつきやすくなります。

子どものウソの特徴3

「自己防衛的である」ということに加え、「悪意がない」「意図的でない」ということも子どものウソの特徴です。

①自己防衛的

ウソのほとんどは自己防衛的な動機から生まれる。叱責から身を守るため、または不快な状況を避けるために反射的に出てくることが多い

②悪意がない

大人のような「相手をだまそう」という計算されたものではなく、むしろその場の状況に対する即時的な反応として現れる

③意図的でない

子どものウソは相手(親や友達など)へのとっさのリアクションであって、計画的についているものではない。時に現実と想像の区別があいまいになったり、記憶が不正確だったりすることから生じることもある

このような特徴があるのは、幼い子どもにはまだ他者を計画的にあざむくほどの高度な認知能力が十分に発達していないためです。相手の状態を深く理解し、それを踏まえて出方を考えるという複雑な思考プロセスはまだ発達途上にあります。

まとめ:子どものウソの特徴を踏まえた対策を

親の頭の中には、「ウソ=悪」という認識があるため、我が子のウソには大きなショックを受けるものですが、悪意を持って相手をだましているのではないので、そこに目くじらを立てるのではなく、「自己防衛によるウソ」への対策を練りましょう。

トリセツ②では「ウソは自己防衛である」という点を子育て心理学の視点から掘り下げ、実践的な対応策をご紹介しています。クセにしないためにも、頻度を上げない工夫をしていきましょう。