【子育ての悩み解決】子どもが何度叱っても同じことを繰り返す理由と効果的な対応法

「いつも同じことで怒られているのに全然変わらない」と悩むママ・パパは多いものです。なぜ子どもは同じ問題行動を繰り返すのでしょうか? この記事では、子どもの行動心理と効果的な対処法を専門家の視点からわかりやすく解説します。
なぜ子どもは叱られても同じ行動を繰り返すのか
- 食事中に何度注意しても立ち歩く
- テレビを消すときに毎回もめる
- 「歯磨きの時間だよ」と言っても先延ばしにする
- きょうだいのおもちゃを勝手に取って毎回けんかになる
このようなことで悩んでいないでしょうか? これらはどれも私の相談室でもしょっちゅう聞くお悩みです。
実はこれらの行動には共通点があります。こうすることが、その子に「何らかの利益」をもたらすということです。単に「反省していない」だけではなく、その行動には子ども視点での「メリット」が存在するのです。
子どもの繰り返し行動の心理学~正の強化とは
心理学では、人間が特定の行動を繰り返す理由を「正の強化」という概念で説明します。これはアメリカの心理学者スキナーによって提唱された行動分析学の基本原理です。
簡単に言えば:
「ある行動の直後に報酬が得られると、その行動は将来的に増加する傾向がある」
ということ。
例えば、
子どもがピアノの練習をしたら上達した
↓
「できた!」という達成感や周囲からの称賛を得られる(=報酬)
↓
さらに練習を続けるようになる
これは親も子もハッピーな正の強化と言えます。
しかし正の強化はハッピーなものばかりではありません。問題行動の繰り返しの場合も同じ原理が働いていることがあります。
宿題をせずにゲームをしている子どもに親がくどくどとお説教をする。よくある場面ですが、もしここに、「ママが怒っている間もゲームが追加でできた」という隠れた報酬があれば、その行動は繰り返されやすくなります。子どもの視点に立つと、叱られるような行動にも「良い結果」が隠れていることがある、というわけです。
この2つが子どもにとっての”報酬”になりやすい
1. 時間稼ぎが報酬になるケース
親に注意されている間も、子ども側が望む活動を続けられている場合がこれに当たります。
例えば、
「歯磨きをしなさい!」と何度も注意されても、なんだかんだと遊びを続けられれば「好きなことが延長できた」という報酬になります。
「テレビを消しなさい!」と言ってもなかなか消さないとき、親が説得や小言に時間をかければかけるほど、結果的に子どもはテレビの視聴時間をを延長できたことになります。
子どもは無意識のうちに「親が説得している間は、まだ遊べる時間が稼げる」と学習し、これが言うことを聞かない行動を強化するのです。
2. 注目を得ることが報酬になるケース
何か問題を起こすことで、親の目線を確保できる場合がこれに当たります。
子どもにとって最も価値ある報酬の1つが親の目線です。特に、きょうだいが多い家庭や親が忙しい環境では、子どもは「自分だけに注目してほしい」という強い欲求を持つことがあります。
例えば、
- ママが下の子の授乳中や電話中に限って、上の子が大きな音を立てたり危ない行動をとる
- 普段穏やかに過ごしている子どもが、親の来客時だけ騒がしくなる
などがそうです。子どもは経験から「静かにしているとかまってもらえないけど、騒いだり、問題を起こすと必ず親が反応してくれる」という法則を学んでしまうわけです。たとえその注目が”叱責”や”怖い顔”という形でも、「誰も自分に関心を向けてくれない状態よりはいい」と感じれば、そのパターンが強化されていきます。
何度叱っても効果がない!問題行動の連鎖を断ち切るためにできること
時間稼ぎ型の問題行動への効果的な対応法
「歯磨きしなさい」「テレビを消して」と何度言っても効果がない場合は、以下の方法を試してみましょう
- 長いお説教を避け、短く明確に伝える
- その場ですぐに行動(ゲームの終了など)させる
- 説明や話し合いは、行動を止めた後に行う
- 一貫性を持って対応する
注目獲得型の問題行動への効果的な対応法
明らかに注意引き行動だなと判断した場合は、
- 危険でない問題行動には、意図的に反応を最小限にする(視線を合わせない、感情的にならない)
- 逆に普通に過ごしているときに積極的に目線を送る
- 毎日10分でも、子ども一人ひとりと集中して過ごす時間を確保する
- スキンシップを増やし、「注目への飢え」を満たす
まとめ:子どもの心理を理解して問題行動の繰り返しを解決しよう
叱られても叱られても同じ行動を繰り返すのは、その行動に何らかの「報酬」が隠れていることが非常に多いもの。叱ること自体が子どもの行動を強化していることがある、そこに気づくことが変化の第一歩となります。
効果的な対応のカギは:
- 「この行動でこの子は何を得ているのか?」と自問する習慣をつける
- 問題行動で得ている「報酬」を、別の健全な方法で満たす
- 良い行動に注目し、それを強化する
- 新しい対応法は即効性がないこともあるので、少なくとも2週間は一貫して続ける
子どもの行動心理を理解することで、親子の消耗戦から卒業し、お互いを尊重する関係へと変化していきましょう。叱る場面が減り、笑顔が増える—そんなポジティブな変化を実感できるよう、今日から少しずつ対応を変えてみてください。