子どものウソのトリセツ②~ウソを減らすためにできる2つのこと

目次

子どものウソのトリセツ①では「子どもがウソをつく理由」についてお話ししました。今回は、その続編として、今日からすぐに始められるウソ対策をご紹介します。

ウソを減らす方法①:一歩目の声かけを変える

子ども部屋に入ったら、壁や床のあちこちに落書きが! こんなとき、思わず子どもに「誰がやったの!」「何したの!」と声を荒げてしまうことはありませんか? 「誰がやったのか」「何をしたのか」なんて一目瞭然なのに……。分かっているのに、つい責めてしまいます。

そんなとき、子どもは親の迫力におされて、「ボクじゃない…」とついウソをついてしまうことがあります。これは、怒られたくないという自己防衛のウソの典型例です。

親にとっては子どものウソは常に悩みの種。でも実は、親が子どものウソを誘発してしまっているケースはとても多いのです。

そしてこの「責められる→ウソをつく」というパターンが繰り返されると、子どもはウソで逃げるクセがついてしまいます。

「親が強く責める → 子どもはウソで逃げる」という図式を理解しておきましょう。事実が明らかな場合は、わざわざ子どもをウソのトラップに陥れる必要はありません。むしろ、状況への対処に焦点を当てる方が効果的です。

たとえば…

  • 絵本が散らばっていたら、「一緒に本棚に戻そうか」と声をかける
  • 壁にいたずら書きがあったら、「消し方を教えるね」と一緒に拭き取る
  • 食べ物をこぼしたら、「自分で片づけようね」とやらせてみる

このような体験をさせることで、ウソを防ぐだけでなく、自分の行動に責任を持つ姿勢も自然と育っていきます。

ウソを減らす方法②:読み聞かせの本を賢く選ぶ

カナダの大学で行われた興味深い実験があります。対象は3〜7歳の子どもたち。実験室に子どもを1人ずつ通し、こう伝えます。

「ちょっと席を外すから、このおもちゃは見ないでね」

しかし、1人で部屋に残された間に、実際には多くの子が好奇心に負けてこっそりおもちゃをのぞいてしまいました。

その過程を終えた後、子どもたちを4つのグループに分けて、次の4つの物語の中の1冊を読み聞かせしました。

  1. ウサギとカメ(コツコツ頑張るカメと油断したウサギの物語)
  2. 狼少年(ウソをついて信用を失う少年の話)
  3. ピノキオ(ウソをつくと鼻が伸びる怖さを伝える話)
  4. ジョージ少年と桜の木(過ちを正直に認めた少年が誠実さをほめられる話)

読み聞かせ後、子ども達に、「僕がいない間におもちゃをのぞいちゃった?」と尋ねると、ある物語を聞いた子ども達だけが、「のぞいちゃった…」と自分のやったことを正直に認める傾向が圧倒的に高いことが分かりました。その物語とは、「ジョージ少年と桜の木」。他の物語を聞いた子ども達と比べると、その差は3倍だったというから驚きです。

この実験から分かるのは…

  • 「ウソをつくと罰を受けるよ」といった脅して誘導するしつけは、ウソを減らす効果がない
  • 「正直でいることは素晴らしい」と伝える前向きなストーリーが、子どもの心に響く

ということです。

ウソを減らしたいとき、つい「ウソはダメ」「ウソつきは泥棒の始まり」と言いたくなってしまいますが、逆に正直さを評価する姿勢こそが、子どもにウソをつかせない一番の近道なのですね。

まとめ:ウソが増える仕組み、減る仕組みを理解したアプローチを

私の相談室でも、お悩みの種類としてウソは別格の印象を受けます。「言うことを聞かない」とか「反抗する」という悩みよりも、ウソは「人間として悪質」と感じやすく、「この子は将来どんな人間になるのか」と心配になってしまうようです。でも、その勢いで親が子どもを責めてしまうと、子どもは自分を守ろうとウソで逃げようとしてしまいます。

「ウソをつくのはダメ」は正しい教えですが、力が入りすぎてしまって親自身がそれに加担していないかを今一度見直してみてください。その場で責めこむよりは、問題解決にシフトし、ウソで逃げることをクセにしないようにしましょう。

子どものウソのトリセツ③では、子どもがウソを「学習」していく仕組みについて掘り下げていきます。親のちょっとした言動が、子どものウソを育ててしまうことも…。その対策もあわせてご紹介します。