「自分の子供が嫌い」と我が子への愛情で悩む方へ ~カウンセリングの現場から~

私の育児相談室では、様々なお悩みを抱える方がご相談に見えますが、その中に、自分の子供のことを愛せずに悩んでいる方がいらっしゃいます。

なかなか人には打ち明けにくいお悩みということで、自分の中に閉じ込めた状態のまま時間が経過している人も多いので、いったいどれくらいの方が同じような悩みを抱えているのかが見えにくいのですが、日頃感じているのは、だれかに相談している人、ましてや私のところに相談に来られる方はほんのほんの一部であって、大半の人は誰に相談することもできずに過ごしているのではないかということです。

そこで本記事では、自分の子供への愛情に悩んでいる方が、読んで少しでも参照になるようなことを、私のこれまでのカウンセリングから得た知見からお伝えしていこうと思います。

「我が子が嫌いになりそう」から「大嫌い」まで幅がある

お話しを聞いて感じるのは、「自分の子供が嫌い」という状況も段階があるということです。このまま行くと、「我が子が嫌いになりそう」という一歩手前のところにいる方もいれば、すでに、「そばを通るだけでムカつく」「ウザいと感じてしまう」「よその子は可愛いと思えるのに自分の子は大嫌い」と状況が深刻な方もいらっしゃいます。

どれくらい嫌いかというのは、もちろん主観的なものなのですが、やはり、「このまま行くと嫌いになりそうな気がする」と感じている方と、「大嫌いでたまらない」と訴える方では、その方に残っているエネルギーが違うと感じることがよくあります。まだ一歩手前にいる人の方が、改善に向けた取り組みへのフットワークが軽いことが多いのです。その点からも、話しずらいテーマではあるけれど、思いきって、だれかに助けを求めたり、相談したりすることは大事だと思います。

好きになろうと思って好きになれるほど簡単ではない

この記事を読んでくださっている方は、ご自身も同じようなことで悩まれているかもしれません。おそらく納得していただけるであろうことは、「好きになろうと思って好きになれるわけではない」ということです。

我が子を嫌いだと感じる自分に罪悪感を感じ、好きになろうと意識を向けるけれど、気持ちは変わってくれない。それにより、さらに自己嫌悪に陥ってしまう……。

このような自分の中の負のスパイラルにはまってしまっていることがあり、「どうすればいいのか」と先々が余計に暗く見えてしまっている方が多いのが実情です。

好きとか、嫌いという気持ちは、自分でコントロールできるものではなく、自然とそういうことになったもの。その結果が”好き”とか”嫌い”という気持ちです。自分たちが結婚したときを思い返しても、気づいたら好きになっていたから結婚したわけです。

好きになろうと思って好きになれるのなら、これほど悩む人はいません。気持ちを変えるのが簡単ではないから悩んでしまうのですよね。

我が子が嫌いという感情は負のサイクルの結果であることがほとんど

我が子が嫌いという感情は、親の心の中だけで突如発生するものではなく、基本的には子供との日々のやりとりを経て、そこに至るものです。「言うことを聞かないから」「思い通りにならないから」「すぐに反抗してくるから」「上の子(下の子)と比べて育てにくいから」など、理由は様々ですが、そこには”サイクル”があります。

何の理由もなしに、「嫌いだ」と言っているわけではないということです。何かうまく行かないことがあって、苦しんで、その結果、嫌いになってしまった、こういうケースが大半です。私のところに相談に来られる方々を見ても、お金を払ってでも改善したいという前向きな思いがあるわけで、一方的に嫌いだと言って、さじを投げているわけではないのが明らかです。そして、今これを読んでくださっているあなたも、前にどうにか進めないかと考えているからこそ、ここにたどり着いてくださったわけです。

何らかのサイクルにはまってしまったものの、その渦中にいるために、なにをどうしていいのかが見えにくい状態にいる、それが「嫌い」という形になって自分を苦しめていることが多いので、そのサイクルをひも解くことがとても大事になります。

紙と鉛筆で問題を可視化し方向性を考える

基本的に私が行っているカウンセリングでは、お話しをしながら、今起こっている負のサイクルを可視化するようにしています。その人それぞれ、自分の子が嫌いになってしまった理由や要因は違うので、これまでの経緯をお聞きしながら、現状をまずお互いが共有できる図のようなものに落とし込むのです。そうすると、今後どんなことをしていったらいいのかという方向性が話しやすくなるからです。

ですので、もし今、我が子への愛情について悩んでいたら、紙と鉛筆を使って、自分の今の状況を言葉にして書き出してみてください。自分の思考や感情、困っていることを中心に短い言葉で書き出します。パズルのように散らばった言葉を眺めると、きっと事象と事象のつながりが見えてくると思います。

「○○が改善されれば、嫌いという思いが少し減るだろうか?」「○○が解消されれば、好きという気持ちが戻ってくるだろうか?」と自問し、「そんな気がする」と思えれば、そこが改善の入り口であることが多いです。

「我が子が嫌い」という感情は直接改めようとせず、間接的にアプローチが正解

どのような手順で状況を改善していくかについては、ケースによって異なりますが、1つ共通して言えることは、間接的なアプローチを取ることがカギになるということです。先ほどもお伝えしたように、「嫌いなのはダメ。好きにならなくちゃ」と直接意識して気持ちを変えられるわけではありません。

なぜこのようなことになったのかを見える形にして、介入の入り口を探し、そこから働きかけていくことで段々と意識が変わっていくものなのです。長い道のりのように思えるかもしれませんが、結果的にはこれが一番早道です。

子育てする過程では、我が子への愛情は一定していないのが普通です。理想論を言えば、常にマックスで愛情を注げればいいですが、現実はそんなに甘くありません。反抗されればムカつくし、もじもじされればイライラすることもあります。そんな1つの通過点に今置かれているのかもしれないと捉えて、早い段階で対応していくことが深みにはまらない秘訣と言えます。

自分の子供が嫌いという悩みは、周りに相談しにくいのもあって、1人で抱え込んでしまいがちですが、自分の中に閉まっておいて自然に消えていくわけではありません。辛くなりすぎると腰が上がらなくなりがちなので、動けるうちに動こうとしてみてください。

 

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