上の子可愛くない症候群で生じる罪悪感への向き合い方

下の子が生まれてから、「なんだか上の子が可愛くない」「下の子の方が可愛い」と感じてしまう。よくないことと分かっていても、その気持ちをコントロールできない……。そのような状態になると、「私は最低な母親かもしれない」「私だけがこうなんだ」と自分を責めてしまいがちです。
私の相談室でもよくお悩みとして持ち込まれるように、実際には同じように悩んでいる方がかなり多い「上の子可愛くない症候群」。この記事では、そこで生じやすい「自分へのダメ出し」や「罪悪感」について掘り下げ、その感情にどう向き合ったらいいのかを公認心理師の視点から解説していきます。
なぜ「上の子可愛くない」と感じるのか
「上の子可愛くない症候群」とは、主に下の子が生まれた後、親が上の子に対して以前ほど愛情を感じられなくなることを指します。
「上の子が可愛くない」と感じる理由は、さまざまな要因が重なって生じます。詳しくは、この記事で掘り下げています。
その中で特に多いのは、
下の子に手がかかる
↓
上の子につい期待をしてしまう
↓
でも、その期待通りには動いてくれない
↓
上の子にイライラする
という状況です。
例えば、赤ちゃんを抱っこしているときに上の子が「抱っこして」と甘えてきても、疲れや忙しさから「今は無理だから後でね」と言ってしまうことがあると思います。そういうとき、上の子が「オッケー、わかった」となることはまれで、逆に聞き分けが悪くなったり、泣き出したりと、期待とは違う行動を取ることの方が多いものです。こうした自分の想定とのズレが度重なり、ある日、「自分の愛情が落ちていることに気づいた」こういうパターンをよく聞きます。
「最低なママ」とは限らない理由
「上の子が可愛くない」と感じたとき、ほとんどのママは強い罪悪感を抱きます。「親は我が子を愛せるのが当たり前」だから「自分の子を愛せないなんて親としてあるまじき姿」と感じるため、自分を「最低だ」「失格だ」とののしってしまうのです。
たしかに、「上の子可愛くない」と感じることは望ましいことではありません。ですが、それは=最低なママなのでしょうか。
私が相談室で出会うママたちに、「じゃあ一般的に最低なママというとどんなママですか?」と聞くと、
- 育児を放棄している人
- 自分のことだけ考えている人
- 家庭のことを何もしない人
- 子どもを虐待している人
とおっしゃいます。自分がそれにそのまま当てはまるかと聞くと、育児も放棄していないし、家のこともこなされているケースがほとんどです。ご飯も作っているし、洗濯もしているし、なんだかんだ家を回してはいる。ただ、イライラするし、落ち込むし、「上の子が可愛くない」という愛情面では悩んでいるけど……。という状態なのです。
悪いところを拡大して自分を全否定してしまっている人が多いですが、実際にはそこそこできていることはあるのに、そういうことはもう目に留まらなくなっています。でも、今の状況が「問題だ」と思うのは、それだけ育児に対して真摯に向き合おうとしているからです。そもそも関心がなければ、子どもへの愛情で悩むこともないのですから。
「上の子可愛くない症候群」による罪悪感にどう向き合うか
こんな風に書くと、上の子可愛くない症候群を擁護しているように聞こえるかもしれませんが、「上の子よりも下の子の方が可愛い」という状態はもちろん望ましいものではありません。もし上の子が「自分は愛されていない」と気づいている場合、その状態が長引けば長引くほど影響は濃くなりますから、少しでも早く改善に持っていく必要があります。
しかし、前に進もうとするときに足かせになるのが「罪悪感」や「自己否定感」です。これまでたくさんの方のお話を聞いてきて感じるのは、自分を責めてしまうと、前に進みづらくなるということです。「私はダメだ、最悪だ」と責めることで、渦に巻き込まれるように気持ちが落ちて行ってしまい、何か改善策をやろうにも気持ちにスイッチが入らない、そんな状態になってしまうのです。
罪悪感を持つことで、逆に改善から遠ざかってしまう。一歩目を踏み出すためにも、「自分を責めるくらいなら前に進もう」という思いがとても大切です。
- 「上の子が可愛いく思えない」という思いも
- 「そんな自分は最悪だ」という思いも
どちらもとてもしんどいものです。ですが、ならば「この子を可愛いと思おう」と思って気持ちが入れ替えられるほど簡単なことではありません。好きとか嫌いという思いは直接コントロールすることはできないからです。できることから手をつけていき、気持ちの変化を期待するのが実際にできることです。
子どもにとって親の愛情は心の栄養になりますから、少しでも状況を改善していこうという心持ちは重要です。罪悪感や自己否定感などの「自分を下げる思い」は、前に進もうという思いを出にくくしてしまうので、意識的にそこに巻き込まれないようにしましょう。「私が落ち込んでいる場合ではない」「自分を責めるよりもっとやることがある」など、自分に効く言葉を見つけて、改善へと立ち上がってください。
対処方法については、こちらの記事に詳しくまとめていますので、ぜひご一読ください。